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中国の社会派作家・閻連科さん―“日中関係いまむかし”

中国の社会問題などを深掘りした小説で著名な作家、
閻連科さんが、初めて日本を訪れました。

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閻さんは、一部中国で「発禁作家」の別名までついているほど、
中国社会に切り込んだテーマの小説を書く「物言う作家」として注目される人で、
一部では、次の中国人ノーベル文学賞受賞者になるのではないか?
とも囁かれています。

今回の来日のきっかけも、日中関係が悪化した昨年9月に、
日本の村上春樹さんが「(今の状況は)安酒の酔いに似ている」
という寄稿を見て、

「こういう時こそ、中国の作家も理性を訴えるべきだ」と、
アメリカの雑誌に寄稿をしたことでした。

『譲理性成為社会的脊梁(理性が社会のバックボーンとなる)』
http://cn.nytimes.com/opinion/20121010/c10yanlianke/(中国語)
http://dot.asahi.com/world/w-general/2012101700002.html(日本語)

この寄稿が日中双方で話題となり、今回日本で開催された
東アジア文化に関する討論会に招待され、初来日を果たしたのです。

実際にお会いすると、優しくて面白く、身近な方という印象。
別れ際には、「北京に来るときは連絡ちょうだい」と言ってくれました。

今回は、その閻さんに、仕事でインタビューをさせていただき、
今の日中関係について、今後日中はどうするべきか、
そのために閻さんはどうしていきたいか・・などを伺ってみました。

その回答から感じたのは、かつての日中関係と比べ、
今の日中関係がどうしても良好にならない理由が、
私たちが思っている以上に単純ではないということでした。
これについて、少し整理してみたいと思います。

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閻さんが、「日本」というものに触れたのは、20代だった1980年代。
文化大革命が終わり、改革開放が訪れた時に、
一夜にして世界中から様々な文学作品が入ってくるようになり、
その中でも最も早く、もっとも多くやってきたのが日本の作品だったそうです。

それは、川端康成や三島由紀夫、安部公房など、当時の社会と、
人間の生死、生きる苦悩などが鮮やかな描写で書かれていて、
閻さんは一気に引き込まれたといいます。

河南省の売血政策でエイズが蔓延した村を描いた『丁庄の夢』や、
毛沢東の有名なスローガンを不倫で風刺した『人民に奉仕する』など、
中国社会を鋭くえぐりつつも、皮肉を込めた描写でストーリー展開する
“小説”を次々発表してきた根底には、この日本文学の影響があるそうです。

しかし、

今の時代、中国で売れている日本の小説はどうか?というと、
ある小説については「非常に浅くて、読みづらい」という回答。
アニメなどについても、「人間の成長過程で深みを増す時の入口には
なり得るかもしれないが、そこでとどまっていてはいけない」といいます。

また、流行や世間体に流れるまま、次から次と移りゆく若者の嗜好は、
中国で重大な政治問題(今回の日中関係の悪化など含む)が起きると、
それまでの親しみがすべて意味をなさなくなる、と釘を刺しました。

要は、そのものの良さを心から理解しないままに、
ちょっと親しんだだけでは、何かあった時に脆く崩れてしまうのです。

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こうした、文学を通じて心の真髄に迫った指摘をされた閻さんですが、
同時に私がふと気になったのは、
「80年代の日中関係が、今のように変化してしまったのは、
他にも背景があるはずだ。それは何だろう」
ということでした。

そこで、今回のことをきっかけに、
中国人の知り合いや、中国語学校の先生・同学などに色々聞いてみました。

定番は、
「90年代に江沢民が始めた“愛国主義教育”が“反日”の内容だった」、
という見方。

この時代に学校で勉強していた私と同年代の人たちや今の10代・20代は、
学校で徹底的に「反日」を叩き込まれ、成人後も消すことができません。

しかし、この“愛国主義”が始まった背景には、実は80年代の中国社会に
伏線があり、その反動だと、一部の中国の人たちは考えています。

80年代に改革開放が訪れ、海外のことに触れる機会が一気に増えます。
特に日本に至っては、家電製品が当時の中国人の心を捉え、
経済発展で家電が普及すると、人々は喜んで日本製品を買ったそうです。

そうなると同時に、人々が中国という国の閉鎖性と海外への憧れを覚え、
民主化を進めようとします。その結末が、89年の天安門事件でした。

「あのような、国を転覆させるようなことは2度と起きてはならない」と、
締めつけを行った江沢民政権は、“愛国主義”を徹底したといいます。
その後の変遷は、上述のとおり・・・結果、若い人たちを中心に、
「日本は怖いもの、嫌なものだ」という「敵」になってしまったのです。

しかし、80年代の話は、それから30年が経った今、
別の意味でも、大きく変化しています。

それは、中国人の、日本そのものへの受け止め方の変化です。
日本の家電は中国や世界で地位を落とし、韓国製品などに抜かれました。
文学は、かつてのような作家よりも、ステータスや流行の質を持ったものが
人気となり、日本への憧れや崇拝はそもそもなくなってしまったのです。

更には、日中の交流が30年前よりも増えたこと。中国には
日系企業が2万社を超え、中国には10万以上の日本人が住んでいます。

一部中国人に聞いたところ、
「日系企業の駐在員は、昼ご飯も休日も日本人同士で固まって、
中国人スタッフと交わろうとせず、夜はまっすぐ家に帰らず
お姉ちゃんの飲み屋でハメを外してるから、嫌だ」と言います。

私も、上海に行った時、日本人が多い地域で、
飲んで騒ぐ日本人の集団と、遠巻きに白い目で見ている中国人を
目の当たりにしたことを思い出しました・・・
ちょうどその頃、日本人留学生が飲んで騒いで、
静かに寝ていたい中国人と衝突したニュースが出たばかりでした。

「家電と文学とテレビ」程度しか日本の情報がなかった80年代に比べ、
ネットや人との交流が増えたことで様々な情報が中国人の耳目に届き

その中には、良い情報と悪い情報が雑多になってきたのです。

一方、
中国社会そのものも、経済発展に伴って“貨幣経済”が優先され、
人間の精神面や文化を愛する心は二の次になってしまったといいます。
どんなことでも、その多くは“お金”を引き合いに出す会話が中心となり、
今の中国人にとって憧れの人は、ビル・ゲイツや稲盛和夫に変わりました。
結婚も「家・車・金」という条件が日本以上にシビアらしいです。

文学に詳しい、ある中国の知り合いからは、
「中国の社会問題は関心がなく、ビル・ゲイツや稲盛和夫の経営哲学を
学ぶような本や、村上春樹など流行の小説が買われている」
との意見も。

こうした、30年の長いスパンで変わってしまった日中双方の環境が、
日中関係を80年代に戻したくても戻せなくなった根底にあるのでしょう。
それを改善するのは、反日教育や島1つをどうこうするだけでは難しく
日頃からの心がけ
ということを、改めて感じさせられるのでした。

また、
「中国人の心底にある“恨み”を日本人はもっと理解するべきだ」
という話もありました…。

なので、今は今で、今なりの改善策を図っていくことが大事です。
日中の政治家や国民は、島1つにこだわって騒ぐのではなく、
日本人なら、中国の社会や人々について、理解をする努力を、
逆に中国人も、日本文学や映画などを通してもいいから、
日本人に少しでも歩み寄ってもらう・・・
これが両国のできることでしょうか。

そして閻さんは、作家として、
「政治家にどれだけ壊されようと(圧力かけられようと)、めげずに
ガラスの器(脆いけど強く、壊す人がいたらその人も怪我するような、
人々にとって必要な文学や発言)を作っていく」
と話していました。

比喩が素晴らしくて、感慨深かったです。

個人的に考えさせられたことが、もうひとつ。
インタビューの時に、閻さんが何度も好きな作家として挙げた「安部公房」。
実は私も大学入試の問題集でこの作品を読んだ時から好きになり、
他の作家よりも好きになって読んでいた時期がありました。
「安部公房のどこが良いのか」という意見も一致していました。

文学作品に込められた“感情”と“感動”。

それは、国籍問わずに共有できるものなんですね・・・。
と思うと、今のギクシャクした状況だって共有しているはずだし、
相手を理解し合う心や妥協点だって共有できるはずだし、
解決する道はいくらでもある気がするのだけど、と思うのです。

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シンポジウムや講演会も含めて5日間しかなかった都内滞在の間、
なんとか時間を作り、徳田秋声の『縮図』に登場した銀座を歩いて、
「明治時代の描写と違う!」と、大はしゃぎした閻さん。
今度、日本にいらっしゃるときは、もっといろんな小説の舞台にお連れします。

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閻さんが発表した小説は、
『丁庄の夢(丁庄夢)』と『人民に奉仕する(為人民服務)』が日本語で販売。
どちらも中国では事実上の「発禁処分」を受けています…。

  

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