台湾『退回服貿』運動と「自由」と「平和」と…
26日から30日まで、出張で台湾へ行っていました。
ちょうど台湾では2014年3月18日、
馬英九総統が中華人民共和国と締結した
「サービス貿易協定(中国語:海峡両岸服務貿易協議、略して服貿)」を
強行採決 しようとしたことに抗議する学生達が、
台湾の国会(立法院)を占拠し続けるという事件が起きていました。
(台湾の新聞は連日一面でこのニュースでした。
馬政権寄りの「聯合報」と、台湾派?「自由時報」で伝え方が正反対)。
「大陸化」してゆく台湾に危機を感じ、大陸人に
若者の雇用や権利などを奪われることを阻止するための行動。
(中国語で「退回服貿」「反服貿」などと呼ぶ運動になった)。
このタイミングなので、昨日の空いた時間を利用して、
「退回服貿」運動をする学生らが占拠している立法院へ。
その、占拠の様に「これが国会か…」と驚きを禁じ得ませんでした。
写真を撮ったら警察に憚られるかな…と、
大陸暮らしの時に染みついた「ビクビク」を思い出しながら
カメラを構えると、拍子抜けするほどオープン。
見ると、周辺には学生に交じって「野次馬」も沢山いて、
みな、観光でもするかのように写真を撮っていました。
総統府も占拠されると聞いたのでそちらも見に行ってみると、
こちらは周囲数百メートルから鉄格子を張っていて入れず。
隣接する「二二八和平公園」も記念オブジェまで鉄の中…。
この日(3月29日)は、翌日の一斉デモ(3月30日)に
備えて準備をしていたから、尚更だったのかもしれないけど、
それにしてもすごい…「平和」まで閉じ込めてしまうあたり、
何かのメッセージを込めていたのかな?という思いに。
そのまま、歩みを隣駅の「中正紀念堂」駅まで進める(足で)。
「自由広場」では、野生パンダの保護を訴えた
「1600匹の紙パンダ展示」が30日まで開催していました。
愛くるしいパンダや絶滅の危機にさらされている動物たちの
オブジェを観に来る人で、広い会場は賑わっていましたが、
そこにもカーネーションの花を手にした、
「退回服貿」の学生達に"対抗する"デモ隊の姿がありました。
そして3月30日。
学生ら50万超(主催者発表、警察は11万という)がデモを実施。
台湾の「平和」や「自由」を象徴する場所をいったん閉じ込めてまで、
再び「戦いの場」として、大陸からの脅威と闘い、
真の自由と平和を勝ちとろうとする学生の姿。
そこには民主主義って何なのだろう…と胸が熱くなるものでした。
一方で、これも民主主義国家の様を語るかのようですが、
立法院周辺(参加している人達)以外の場所は日常風景のまま。
周囲の人は、運動に対して冷めた見方をしている印象で、
タクシーに乗るたび運転手に今の活動をどう思うか聞いても、
「支持しない」「馬鹿だ」との反応。口にしたのは、
「俺たち民衆は生活できればそれでいい、混乱を起こすな」でした。
対岸の火事とする人、迷惑に思っている人もいて、
それを自由に言えるのも、台湾であり、民主主義でしょう…。
しかし中には、デモに参加しなくても馬政権には不満で、
「馬政権になって大陸寄りになっているけど、
恩恵を受けているのは大陸と関係のある人だけで、
ほとんどの人の暮らしは一向によくならない」と言う人も。
今の学生たちが起こしている行動が、
馬政権の行く末に少なからず影響を与えたことだけは確かでしょう。
いずれにしても、自らの暮らしのために政治に声を上げ、
行動を起こしていることに対して、学生達が、
「選挙で選んだ人たちがちゃんと仕事をしないから、
私たちが自ら行動を起こすしかなかった」と話すのを
某ニュース番組で聞いた時には、考えさせられました。
最近の日本は(最近ではないかも?)政治に不満があっても、
「しょうがない、そんな政治家を選んだのは自分たちにも責任がある」
という言葉で掲げた拳をすぐ引っ込めがち。日本の人たちも、
台湾の若者たちくらい強気になってもいいのではないかな。
そんな思いで、4年ぶりの台湾を後にしました。